Ideas
IDEA・20
容器の技術×料理の技術で社会課題を解決
+Recipeプロジェクト
食の課題-レトルト技術-
Outline
概要
調理の技術と容器の技術は近いようで遠い存在である。
調理師からすると、レトルト食品や缶詰をレストランで利用する機会は少ない。同様に、レトルト食品や缶詰を製造する際に調理の技術を使うことも少ない。
これまで交わることの少なかった容器の技術と調理の技術を融合することで、食品ロスや労働力不足、災害時やパンデミックの際にも役立つソリューションが生まれるかも知れない。
Challenge
食の課題-レトルト技術-
近年、食を取り巻く環境は大きく変化し、様々な社会課題が顕在化しています。農業従事者の高齢化と後継者不足、食料自給率の低下、サプライチェーンの各段階で発生する食品残渣や未利用食材を含むフードロス問題、災害時における栄養バランスの取れた食事の確保など、食に関する社会課題は多岐にわたっています。
Solution
長期保存できる本格料理
トマト・ファルシ(トマトの肉詰め)
2030年頃に建設予定の月面基地でも生産が予定されているトマトを丸ごと使い、南仏の郷土料理であるトマトの肉詰めを缶詰にアレンジ。詰め物には、牛豚合挽き肉と、動物性ミートに比べて環境負荷の軽減が期待される植物性のミートを1:1の割合で用いた。加圧加熱することで、ヘタの部分も含めて100%トマトを可食とすることができた。
だし
昆布と鰹節から引いただしの缶詰。プロのつくる日本料理の味わいや香りに近づけるため、加圧加熱の影響を計算して、原材料の分量や抽出時間を調整した。塩を加えていないので、好みの味付けにしてすぐに使うことが可能。
ぶり大根
通常調理とレトルト製造との違いを知る目的で最初に取り組んだ日本の郷土料理のレトルトパック。加熱工程で様々な操作を加え得るふつうの調理と、圧力釜での加圧加熱が最終工程となるレトルト殺菌との違いを理解し、食材を理想の状態に仕上げるための試行錯誤の末に、濁りがちだった煮汁を澄んだ状態にするための方法を習得するなど、共同研究の成果が詰まった一品。
鹿スネ肉のブレゼ、ソース・エーグル・ドゥース
フランス料理である鹿スネ肉の煮込みを、国産ジビエ認証施設・長野県富士見高原ファームの鹿スネ肉をレトルトすることで実現した一品。農作物に大きな被害を与える野生鳥獣の代表格である鹿の肉の中でも人気のないスネ肉は、本来下処理や加熱に時間がかかるが、レトルトすることで、多くの手間を省きながら、安全でおいしい料理に仕上げることができることがわかった。また、付け合わせを個々にレトルトパックすることで、一皿に異なる風味の素材を盛り付けること、さらに新たな素材との組み合わせでバリエーションが広がる可能性を見出した。レトルトのクオリティを上げることで、常温ストックのレトルト食品を高級料理として提供できる可能性を見出すこともできた。
エスプリ・ド・タタン
1個分のりんごを缶詰にした製品。りんごを少量の砂糖と煮詰め、缶に充填して蓋はせずにオーブンで焼き、さらにレトルト釜で加圧加熱殺菌することにより、長期保存とおいしさを実現。甘さも増して、奥深い味わいに仕上がった。生産段階で農家が廃棄している「訳ありのりんご」などを使用して食品ロスの削減に貢献することを目指しているが、今回は焼き菓子に向いている市販の紅玉を使用。