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詰太郎/コロナ禍でどう変わる?日本酒蔵とメーカーによる新時代の挑戦

新型コロナウイルスが流行し、未曾有の事態に陥った2020年。
世の中が目まぐるしく変わる今、新しいライフスタイルにマッチしたビジネスの需要が高まっています。

 

2020年9月28日(月)、「【コロナ禍で世界戦略!?】日本酒のポテンシャルを引き出す『缶』の未来」と銘打った Web セミナーが開催されました。

With コロナの時代に入り、日本酒の分野でも飲食店やイベントでの消費形態や物流構造における大きな変化が見込まれます。そんな中、私たちは少量かつ機能的な日本酒缶を自社で製造できるサービスで、業界の常識を変えようとしています。

今回の Web セミナーでは、「容器+充填」の設備レンタル事業「詰太郎」について、酒造や飲食店に向けた説明が行われました。登壇したのは、東レ株式会社・印社システム販売部の辻旭弘さん、株式会社 Agnavi・代表取締役 CEO の玄成秀さん、東洋製罐株式会社・販売一部 販売第二課長の落合正樹の 3名。国際唎酒師として活躍する、宮内菜奈子さんが司会を務めました。

セミナーでは東レの辻さんが缶にプリントする印刷技術について、Agnavi の玄さんが今後展開予定の日本酒缶専門 EC サイト「Ichi-Go-Kan」について、東洋製罐の落合が詰太郎について各々解説をし、最後に参加者の皆様からいただいた質問に答えました。

この記事では、登壇者3名が発表した詰太郎に関する情報をまとめていきます。

東洋製罐の画期的な設備レンタル事業「詰太郎」

詰太郎とは、東洋製罐が提供する「容器+充填」の日本酒用アルミ缶充填機レンタルサービスのこと。まず業者がトラックで利用場所まで充填機を運び、お客様で充填とフタの密閉を行っていただきます。利用後はトラックで充填機を回収。そのため、設備投資の負担なく、必要なときだけの利用が可能なのです。

サイズは、長さ 3m・幅 1.2m・高さ 2.25m と一般的な充填機に比べて非常にコンパクト。液体を充填するフィラーにはきめ細やかなフィルターが付いていて、ゴミや虫が入るのを防ぎ、瓶のように目視で異物混入をチェックできない点もカバーします。

そもそも、なぜ缶なのか?

「小容量」「軽い」「割れない」「遮光性がよく光による品質劣化がない」といった特徴を持つ缶は、実は日本酒の容器として最適。日本酒の三大大敵である「酸素、紫外線、湿度(高温)」も、密閉性の高い缶なら問題ありません。

特に紫外線の防御率は 100%で、小容量サイズで常に封切りと同じ状態で飲むことができます。また、ガラスカップ 328g に対してアルミ缶は 198g(1 号サイズの場合。当社調べ)とかなり軽量。鞄に入れていても、軽量、かつ瓶が割れる心配もありません。加えて、海外輸出に適していることも大きなポイント。

「輸送効率が良く」「パッケージからの情報量が多く」「おいしい状態で、複数銘柄を手軽に楽しめる」缶はまさに良いことづくし。

店頭やイベント時はもちろん、今後は Agnavi が手がける日本酒缶に特化した専門 EC サイト「Ichi-Go-Can」でも販売予定。缶にすることで選びやすく買いやすいシステムが実現し、さらに少量から楽しめるので、おいしい日本酒との出会いの場がぐんと広がります。

これまでのオリジナル商品は地方活性化にも

説明に続き、詰太郎を活用したさまざまなプロジェクトの事例を紹介しました。

① 列車の沿線の地酒のコラボレーション
小田急電鉄は、特急ロマンスカーデザインの缶に神奈川県・大矢孝酒造の「残草蓬莱」を詰めた日本酒缶を販売。電車だとどうしても揺れがありますが、軽量ながら安定感のある缶は乗り物と非常に親和性がありました。SNS でも大きな反響を呼び、わざわざロマンスカー缶を購入するため乗車する人もいたそうで、売り上げも大きく伸びたという報告があります。

② 地域イベントと地酒のコラボレーション
毎年 70 万人以上が集まり、100 年以上の歴史を誇る秋田県大仙院の大曲花火大会。今年は残念ながら開催が見送られましたが、2019 年の第 93 回において、地元酒造・鈴木醸造店の「秀よし」が缶飲料となって販売されました。花火大会が終わった後も大仙市を思い出してもらえるお土産を作りたいという要望のもと企画された同商品。東洋製罐が製作したアプリ「パケうぉっち」と連動していて、缶にかざすと花火の動画を観ることができます。こちらも SNS で 1500件以上のいいねが付くなど反響が大きく、日本全国だけでなく香港でも反応がありました。元々は秋田県でのみ販売されていた日本酒が世界へ発信された一例です。

詰太郎についてもっと知りたい! 多くの質問が寄せられた Q&A コーナー

セミナーの最後は、登壇者への質問コーナー。参加者から寄せられた問いに対する東洋製罐・落合からの答えをいくつか紹介します。

「フルオープン缶ではなく、プルキャップのような一般的な缶もできますか?」
-可能です。ただ日本酒は味だけでなく、缶を開けて口元に寄せた時の風味も楽しむものだと思うので、開発当初からフルオープンタイプを日本酒用の缶として使用しています。

「缶に詰めると、日本酒に缶の匂いは移りませんか?」
-はい、問題ございません。採用いただく際、あらかじめ中身をいただいて匂い移りなどを分析し、蔵元様に確認していただいた上で製品化しています。

「缶のデザインの相談は可能ですか?」
-蔵元の方で考えられたデザインをプリントすることも可能ですし、弊社のデザイングループで一から起こすこともできます。ご紹介したロマンスカー缶、花火缶のどちらも弊社のデザイングループが製作したものです。

「発注から納品までどれくらいの期間が必要ですか?」
-一からデザインを起こした場合だと、大体 3〜4 ヶ月後には販売の準備が整います。時期によっては超特急対応などもできるので、お気軽にご相談ください。

「詰太郎を使用する場合、最低ロット数はどれくらいですか?」
-印刷缶だと 15,000 缶からご提案しています。15,000 缶だと多すぎるという方には、缶自体にはプリントせず、無地缶にラベルを貼ったデザインをご案内しています。まずは無地缶で採用し、軌道に乗ってから印刷缶に切り替えていただくことも可能です。

他にも、「女性が手にしやすいデザインがあると普及しやすそう」「そのまま冷凍庫に入れて凍らせたら日本酒シャーベットが楽しめますね」など、さまざまな声が寄せられ大盛り上がり。セミナーの終了時刻まで、多くの質問や応援のメッセージが集まりました。

東洋製罐・落合よりウェビナーを終えて

Webセミナーを終えた感想と、その後の反響について落合のコメントを紹介します。

「私は普段営業職で、今回ご一緒した東レ様、Agnavi 様と仕事をすることはなかなかありません。しかしなぜこのようなご縁があったのか振り返ってみると、日本酒缶および詰太郎の営業において、常に“自分はこうしたい”“これが実現すればおもしろい”ということを社内外に発信し続けたからではないかと思います。思いを発信し続ける事によって、それに共感してくれる人たちが寄ってきてくれる。情報が集まる。そしてそこから面白い物が生まれる。今回のセミナーはそうして開催できたものだと感じています。

今回ご一緒した Agnavi 様のお力添えのおかげで、我々が実現したかった“酒蔵様に売り場を提供する”という目標を達成することができました。これをきっかけに、さらに多くのことを実現できればと思っています。

また、Webセミナーという新たな営業スタイル、拡販方法に挑戦できたことも今回の大きな収穫です。これは、コロナ禍でなければ決して発想できなかった営業スタイルだと思います。お得意先に訪問せずとも、拡販・プレゼンができるので、仕事のやり方が変わってきている現代においてとても有効的な手段だと感じました。

セミナー自体も大変好評で、酒蔵様だけでなく、飲食店・コンサル・商社・卸など幅広い業種の方々に聴講いただけました。一気に日本酒缶および詰太郎の存在が知られた実感があり、またここから色々な面白いことができるんだろうなと、今後に向けてさらに胸をふくらませています」

 

コロナ禍だからこそ、変化を起こす必要がある。自宅や外出先で気軽に楽しめる日本酒缶は、この時代に非常にマッチした商品だと言えます。缶ビールのように日本酒缶が日常に馴染む光景は、そう遠くない未来かもしれません。

Profile

落合 正樹(おちあい まさき)

東洋製罐株式会社販売第一部にて日本酒の一合缶の販売や詰太郎の運営に携わる。お祭の当日も酒蔵や地域の出店に混じって持ち前の営業スキルを駆使して缶入り日本酒を売りさばく。大の日本酒好き。
<お問い合わせ先>
東洋製罐株式会社 販売第一部
東京:03-4514-2022 / 大阪:072-631-3120
tsumetaro@toyo-seikan.co.jp