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デザインセンター×外部団体での活動【後編】
知財についての知識を深め、広げる。JPDAデザイン保護委員会

# インタビュー・対談

東洋製罐グループ製品のパッケージデザインやグループ各社の販促物の制作を担当している東洋製罐グループホールディングスのデザインセンター。他社との交流による知見・知識の拡大や、業界内での人脈形成を目的とし、外部団体との活動を積極的に取り入れているという当部署に、その取り組みの内容についてお聞きしました。

実際に外部団体での活動に参加したデザインセンターのメンバーに、参加に至った理由や活動内容、取り組みを通して得た知識・経験についてインタビューします。

後編でお話を伺うのはJPDAデザイン保護委員会のメンバーである大谷啓浩。現在デザインセンターで管理職を務める大谷は、委員会での勉強会やセミナーの企画を通して、どのようなことを学んだのでしょうか。

知財についての情報交換・発信の場「JPDAデザイン保護委員会」

――JPDAデザイン保護委員会についてご説明いただけますでしょうか。

大谷:公益社団法人日本パッケージデザイン協会(JPDA)*1の中にある委員会の一つで、主に知財についての勉強や情報発信をしています。

*1 公益社団法人日本パッケージデザイン協会/JPDA……1960年に設立されたパッケージデザインに関わる日本の民間団体で、現在16の委員会によって構成。価値を伝え、魅力を創出するためのさまざまな「場づくり」を試みている。

――大谷さんはどういった流れで委員会に参加したのでしょうか?

大谷:5年ほど前に上司から「今の大谷には外部の人との交流が必要なんじゃないか?」と勧められたのがきっかけで参加しました。当時の私は社内の人としか関わったことがなかったので、委員会に入ることで社外デザイナーの働き方や考え方から刺激を受けられるだろう、という思いで言ってくれたのだと思います。

――委員会には他にどのような方が参加しているのでしょうか?

大谷:インハウスデザイナーの方や特許事務所の方など、パッケージデザインに従事する職種の方がいらっしゃいます。メンバーは6〜7名で、私が一番日が浅いため、毎回勉強させていただいています。少人数なのでメンバー間でどんどん知識が蓄積されていく感じです。

委員会での経験が、管理職になった現在の糧に

――委員会での具体的な活動内容をご紹介いただけますでしょうか?

大谷:最近はオンラインで2カ月に1回くらいのペースで活動しています。主な活動の一つが、委員会のメンバー間で行われる勉強会。最近の知財にまつわる事例を踏まえて話し合う、情報交換の場になっています。

あとは会員以外の一般の方も含め、広く情報を提供しようということで、JPDAのサイト内で知財に関する記事を掲載しています。他にも大きな活動として、セミナーも年に2回開催しています。

――セミナーを開催するにあたって、委員会ではどんな活動をしているのでしょうか?

大谷:最初に行うのが企画会議です。知財に関して自分たちの身の回りで実際に問題になっていることを話し合います。それを踏まえて、受講者の役に立ちそうなテーマを決定し、そのテーマを専門とする講師の方を手配します。最近はオンラインでの開催が多くなったのですが、以前までは会場探し、チラシ作り、名簿記入や会場設営などの当日運営まで自分たちで手配していました。

過去に制作したチラシ

――委員会のメンバーで企画から運営まで全て行なっているのですね。デザイナーの仕事とはまるで違うように思います。

大谷:そうですね。今はデザインセンターの全体を見る管理職という立場ですが、委員会に参加した当初はまだデザイナーとして手を動かしていた時期。企画運営をする経験はあまりなかったので、とても良い勉強になりました。おかげで管理職になり企画に携わるようになってからも「こういう風にやればいいんだな」というのが肌感でわかる場面があったので、まさに経験が活きていると感じます。

――委員会メンバーとの交流は、大谷さんにどんな影響があったのでしょうか?

大谷:企画をするためには、とにかくいろんな情報をインプットすることが必要なのですが、私にはまだそれが足りてないと感じました。一方で、委員会の先輩方はいろんなところにアンテナを張りながら物事を見ていらっしゃるので、その点はすごく参考になっています。

また、これまでやってきた仕事はメンバー一人ひとりで違うので、同じ事例一つとっても、話し合った時に目の付け所が違うのも面白いです。同じように、きっと私も他のメンバーから見たらそう思われているかもしれません。

セミナー「クリエイターのための知的財産権」開催中の様子

外部活動で得た人との繋がり、そして自らの成長

――知財について学ぶことで得た気づきや知識はありますか?

大谷:弊社は知財を専門とする部署があるので、分からないことがあればその部署に聞けばいいのですが、そのような部署を持たない環境で働くデザイナーがたくさんいることを知り、我々は恵まれているんだなと感じました。

とはいえ、やはりデザイナー自身が知財の知識を持つことも大事だと思います。知識不足で知らないうちに権利を侵害し、訴えられてしまう可能性もある分野なので。実は私も参加当初は知財のことをあまりよく知らなかったのですが、過去にメンバーが掲載していた記事を読んだりして少しずつ勉強していきました。委員会ではその道のプロであるメンバーに気軽に質問できる環境があるので、分からないことは質問するように心がけています。

知財を学ぶことは、トラブルの予防になるだけでなく、デザイナーとしても大きなアドバンテージにもなり得ると思います。例えば、トンボ鉛筆MONOシリーズの3色の色の組み合わせやコンビニエンスストアのロゴの配色、電子マネーを使ったときに鳴る効果音など、そんなものまで? というものも商標登録ができるんです。そういう知識が豊富にあることはデザイナーとしての信頼にも繋がりますし、意義があるのではないかと思います。

――今後このような外部活動は継続していく予定でしょうか?

大谷:そうですね。デザインセンターはJPDAの他にも、公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)と公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)にも法人会員として所属しています。業界の情報をキャッチするためにも、今後も団体を横断してさまざまな方と関わらせていただきながら、関係性を保っていきたいと思います。

――ありがとうございます。最後に社内の外部活動に興味がある方に向けてアドバイスをお願いします。

このような活動は会社のためになることから、業務時間内に“仕事”として取り組むケースが多いと思います。通常業務との両立は大変かもしれませんが、社内の皆さん、特にリーダー職の方には、ぜひ社外でも活動していただきたいと思います。社外の方と活動を共にすることは、人との繋がりができるだけでなく、自分が成長するきっかけにもなると思いますので。

Profile

大谷啓浩(おおたに よしひろ)

大谷啓浩:東洋製罐グループホールディングス株式会社デザインセンター