Ideas

IDEA・17

宇宙開発向け生活環境検証ユニット
DAN DAN DOME EXP. STATION

宇宙開発-必要な検証-

Outline

概要

東洋製罐グループと極地建築家として知られる村上祐資氏が代表を務めるNPO法人フィールドアシスタントは、共同で開発を進めていた組立式ダンボール製テント『DAN DAN DOME』を活用し、宇宙開発向け生活環境検証ユニット『DAN DAN DOME EXP. STATION』を開発。ネジや釘を一切使用せずパーツを簡単にドッキングさせる利便性、宇宙を想定した生活にも充分耐えうる拡張性を備え、様々な「想定外」のシミュレーションをこれまでにない簡易さで行うことが可能になります。

Challenge

宇宙開発-必要な検証-

近年、民間企業における有人宇宙飛行や、宇宙資源法の成立、月面への有人宇宙飛行計画「アルテミス計画」の進行、新たな日本人宇宙飛行士の選抜など、宇宙開発における様々な動きが国内外で加速しており、その関係人口も年々増加しています。月面や火星への着陸が現実的な未来となってきているなかで、ロケットやステーションなどハード面の開発のみならず、宇宙環境下での生活をより深く検証することの重要性も高まっています。一般的にこうした検証は、専門施設や自然の洞窟などで行われており、多くの時間とコストがかかってしまうため、非常に限られた機会となっているのが実情です。

Solution

宇宙開発向け生活環境検証ユニット DAN DAN DOME EXP. STATION

利便性・拡張性・耐水性を兼ね備えた検証空間を実現

本プロダクトは、『DAN DAN DOME』シリーズの「アートモデル」、「インナールーフ」、「エントランスパーツ」、「スペースユニット」を組み合わせた合計9棟のドームで構成されています。フィールドアシスタントが長年培ってきた模擬実験のノウハウを提供し、宇宙と地上管制の現場を想定した検証を可能にします。 複数人の仲間と会話や協力を必要とする組み立てプロセスや実際の使用シーンでは、月や火星での基地建設作業を想定した船外活動におけるチームビルディングや訓練の検証方法としても有効。また、東洋製罐グループの独自ラミネート技術を用いた高い耐水性も実現。閉鎖的な空間を簡単に作り出すことが出来るため、宇宙飛行士だけではなく地上管制官やプロジェクトに関わるあらゆる方にも宇宙生活を想定した体験を提供でき、プロジェクト推進の加速をサポートいたします。

EXP.の意味

EXP.とは、「EXPEDITION(探検)」、「EXPERIMENT (実験)」、「EXPERIENCE(経験)」を意味しており、失敗をなくす/失敗を洗い出す/失敗にふれるといった目的に対して、トライ&エラーを実行できる場となってほしいという思いから名付けられました。

『DAN DAN DOME』シリーズ

①アートモデル

屋外使用に対応した耐水モデルである「スタンダード」をベースに、 印刷やペイントにも対応したホワイトモデルです。

②インナールーフ

アートモデルにオプションとして加えられた、内外とも突起(リブ) がほぼなくなる内装壁ドームユニット。プロジェクター投影等を可能にしています。

③エントランスパーツ

『DAN DAN DOME』の開口部に上下にぴったりとはめ込むことで壁面に、下半分なら窓に、用途を変更することを可能にするオプションの扉ユニットです。

④スペースユニット

2棟以上の『DAN DAN DOME』を連結して、複数の部屋がある空間として使用することが可能になる、オプションの通路ユニットです。

各企業担当者のコメント

東洋製罐グループホールディングス株式会社 イノベーション推進室 三木逸平

包装容器はこれまで中身を安全に守ったり、遠くへ運べるようにしたり、地球上だけでなく宇宙でも重要な役割を担ってきました。そして現在は、保存性や利便性に加え、“循環”というキーワードが欠かせません。東洋製罐グループは100年以上、“包むこと“と同じくらい”捨てること”に真剣に向き合ってきました。『DAN DAN DOME EXP. STATION』では、容器の技術や知見を活かし、必要最低限の強度で、拡張性やリサイクル性も高い人を包む容器を体現しました。必要な中身を必要な人に届けるインフラとしての役割を果たしつつ、資源を循環させていく仕組みを作ることで、地球でも宇宙でもサステナブルな社会を実現できるよう、今後も様々な取り組みを進めてまいります。

NPO法人フィールドアシスタント 代表 村上祐資氏

私たちは、希少価値を前提にした宇宙ブームへの危機感を背景に、それとは一線を画したプロジェクトを日本から動かしていこうと思っています。「見たい夢」を見に行くための宇宙ではなく、極地があらわにする「見たくない現実」にこそ、私たちは真正面から向き合うべきだと考えています。そこから見える世界は、地味かも知れないけれど、暮らしを未来に繋ぎ続けていくためのヒントに溢れています。

一般社団法人 SPACE FOODSPHERE 代表理事 小正瑞季氏

月や火星における有人宇宙探査を安全かつ持続的に行うためには、閉鎖隔離環境における生活の様々な課題に立ち向かう必要があります。特に食は、宇宙生活に潤いを与え心の支えになることもあれば、人間関係の問題の火種にもなり得る重要な要素ですが、あらゆるリソースが制限される月や火星では地上のような豊かな食を確保し続けることは困難です。この課題に対処するために、私たちは厳しい制約の中でも地上の日常食と同等の食の確保を可能とする様々なソリューションやQOL観察システム等の開発を進めています。それらの有効性と課題の検証のため、月や火星の生活の課題を高度に模擬できる可能性のある『DAN DAN DOME EXP. STATION』を活用していきたいと考えています。

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